今回は、株式会社の役員変更登記について、司法書士の目線で考察していきたいと思います。
1.役員変更登記の依頼があったとき
会社から役員変更登記の依頼があったとき、既に株主総会や取締役会等で役員変更に必要な手続きが済んでいる場合や、これから役員変更の手続きを進めていく場合などがあります。
役員変更の手続きが済んでいる場合でも、議事録等の書面が作成済の場合や議事録等はまだ作成していない場合があります。
こうした違いによって、司法書士の関与の度合いが変わってきます。
書類が作成済の場合は、適法に変更手続が行われているかどうか、書類に不備がないかどうかをチェックすることになります。
書類が未作成の場合やこれから役員変更手続を進めていく場合は、会社の実態に即して司法書士が議事録等の書類を作成することがあります。
2.チェックポイント
役員変更登記を行うにあたって、まず会社の現在の登記情報の内容と定款の内容を確認することが必要です。
登記情報については、会社の商号と本店所在地が分かれば、登記情報提供サービスを利用して簡単に登記情報を入手することができます。
定款については、会社が保管している書類なので、会社から提供してもらうことが必要になります。
定款を紛失している場合やきちんと整備されていないケースでは、公証役場で原始定款の謄本を取得したり、過去に定款変更の決議をしていないかどうかを会社の担当者に確認したりする作業が必要になります。場合によっては、定款全体の見直しが必要になることもあります。
定款では、役員の員数、選任(選定)方法、任期、事業年度等を確認することになります。
任期の起算点については、旧商法では「就任時」でしたが、会社法では「選任時」となりましたので、登記記録だけでは退任日が判断できない場合があるので注意が必要です。
補欠・増員の任期短縮規定がある場合も、任期の計算に注意する必要があります。
また、欠格事由、兼任禁止規定、競業避止義務等に抵触していないかの確認も必要です。
3.必要書類
取締役の辞任の場合は、辞任届が必要です。
登記所に印鑑を届け出ている取締役が辞任する場合には、登記所届出印による押印又は実印による押印(印鑑証明書添付)が必要となります。
死亡の場合は、死亡を証する書面が必要です。
取締役が新たに就任する場合(再任でない場合)は、株主総会議事録、株主リスト、就任承諾を証する書面、本人確認書類が必要になります。また、取締役会非設置会社の場合は、就任承諾を証する書面に実印による押印(印鑑証明書添付)が必要になります。
代表取締役が新たに就任する場合(再任でない場合)は、取締役会設置会社では取締役会議事録(出席取締役等の実印押印と印鑑証明書)、就任承諾を証する書面(実印押印と印鑑証明書)が必要になります。なお、改選前の代表取締役が取締役又は監査役として出席して、登記所届出印を押印している場合は、取締役会議事録への他の出席取締役等の実印押印と印鑑証明書は不要になります。
また、取締役会非設置会社で定款に互選規定がある場合は、定款、取締役の互選書(登記所届出印の押印がない場合は、取締役全員の実印押印と印鑑証明書)、就任承諾を証する書面(実印押印と印鑑証明書)が必要になります。
また、取締役会非設置会社で株主総会決議で選定した場合は、株主総会議事録(出席取締役等の実印押印と印鑑証明書)、株主リスト、就任承諾を証する書面(実印押印と印鑑証明書)が必要になります。なお、変更前の代表取締役が株主総会に出席し、登記所届出印を株主総会の議事録に押している場合には、出席取締役等の実印押印と印鑑証明書は不要になります。
4.その他
建設業等の許認可を伴う事業を行う会社においては、役員変更の選任懈怠と登記懈怠とで許認可関係に影響が出てくる場合があるので注意が必要です。他にもいろいろ留意点があるので、役員変更登記は、簡単そうでなかなか奥が深い登記といえます。