民事信託の基礎①

財産管理

1.一新された新信託法

近年、民事信託に関心が集まっています。
民事信託は、大正時代に制定された旧信託法が平成18年に改正されたことによって、新たに設けられた信託制度です。
民事信託という用語は法律で定義されているわけではなく、営業として行わない信託のことを民事信託や家族信託と一般的に呼んでいます。一方、営業として行う信託のことは商事信託や営業信託と呼ばれています。
旧信託法の時代のときは、基本的に信託銀行が営業として信託業務を行っていましたが、新信託法になってからは、金融機関以外でも信託の受託者になることが可能になりましたので、これによって民事信託が新たに登場しました。
民事信託では、後継ぎ遺贈型受益者連続信託や高齢者等の福祉を目的とした福祉型信託ができるようになり、信託の活用の幅が広がりました。
新信託法は平成19年に施行されました。
それから10年以上が経過し、民事信託の活用事例もだいぶ蓄積され、司法書士の間でも民事信託に取り組む人が増えてきました。
今後もますます民事信託が利用されることになると思います。

2.民事信託とは何か

民事信託は、端的に言ってしまえば財産管理の一手法です。
財産管理の手法には、民事信託以外にも法定後見、任意後見、財産管理委任、死後事務委任等が挙げられます。
法定後見や任意後見は認知症等になったときに後見業務が開始し、逆に財産管理委任は認知症等になれば財産管理業務が終了することになります。死後事務委任は、委任者の死後に効力が発生し、死後事務を行うことになります。
このように民事信託以外の手法は、カバーできる守備範囲がそれぞれ異なるわけですが、民事信託は、元気なときから死後の手続きに至るまで全ての期間をカバーすることができるのが特徴の一つといえます。
ただし、民事信託は万能というわけではありません。例えば、民事信託は、財産管理を行うことはきますが、身上監護については限定的にしか行えないので、広範な身上監護については、後見制度の利用を検討する必要があります。
それぞれの手法にはメリット・デメリットがありますので、民事信託を利用する際は、他の財産管理の手法を比較検討したうえ、場合によっては他の手法と組み合わせるなどして利用する必要があります。

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