民事信託の基礎②

信託・財産管理

前回に引続き民事信託について概説してきます。
民事信託の根拠規定となる信託法(平成18年法律第108号)は、平成18年に改正され平成19年9月30日に施行されました。
条文は第1条から第271条まであります。

1.信託の定義

「信託」とは、「特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。」と定義されています(信託法2条1項)。

つまり信託は、委託者(財産を有する人)が、受益者(利益を受ける人)の利益のために、受託者(財産を管理する人)に財産の管理・処分を委ねる制度です。

2.信託の機能

(1)倒産隔離機能

信託は財産の管理・処分を委ねる制度ですが、単に財産の管理を任せるだけでは財産管理委任と変わりません。
信託が財産管理委任と違うのは、信託は、委託者の財産(信託財産)を受託者に移転することにあります。

ここで問題となるのは、受託者が破産してしまった場合どうなるかという点です。

受託者には、受託者自身の財産(固有財産)が当然あります。
もし、その固有財産と委託者が託した財産が混ざってしまうことになれば、受託者が破産したときに委託者が託した財産まで取りあげられてしまうことになり、委託者としては倒産リスクが怖くておちおち財産を託していられません。

そこで信託法は、受託者は信託財産と固有財産を分別して管理しなければならないと定めており(信託法34条)、受託者が破産しても信託財産は破産財団に属さないと規定しています(信託法25条)。

もっとも受託者が分別管理を怠ったときは、受託者の固有財産と信託財産の区別がつかなくなり、受託者の債権者から強制執行を受けたり、受託者が破産したときに受託者の破産財団になったりしてしまうおそれがあります。

したがって受託者は分別管理を怠らないよう留意する必要があり、登記・登録が必要な財産については登記・登録を行い(信託法14条)、その他の財産についても受託者の固有財産と分別して管理していることが客観的にわかるようにしておかなければなりません。

分別管理の方法については、また別の機会に取り上げたいと思います。

(2)意思凍結機能

委託者が受託者に財産の管理を任せた後、委託者が認知症になったり死亡したりした場合どうなるでしょうか。

財産管理委任契約であれば、そこで契約は終了してしまいます。
一方、信託の場合は、委託者の死亡等に影響されず、その後も信託に定められた目的に従って信託が継続します。

例えば、委託者が収益不動産を信託し、家賃収入を当初は委託者自身が受けられるように設定し、委託者が死亡した後は委託者の配偶者が家賃収入を受けられるように予め設定しておいたとします。

すると委託者が死亡しても、そこで信託は終了せず、以後配偶者に家賃収入を給付する目的のために信託が続くことになります。

また、信託の途中で受託者が死亡した場合も、予め定めておいた受託者(第二受託者)が引受けるか、又は委託者と受益者の合意によって新受託者を選任することによって、信託が続くことになります(信託法62条1項)。

もちろん委託者や受託者の死亡によって、信託を終了させることも可能です。

このように、別段の定めをしない限り、委託者や受託者の死亡等の事情により信託が影響を受けることがないため、信託設定時の委託者の意思が信託の続く限り維持されることになります。

(3)転換機能

信託が設定されると、受益者は受益権という権利を得ることになります。

つまり、信託財産が受益権という権利に転換されたことになります。

この受益権を分割して複数の人に与えたり、受益権を元本受益権と収益受益権に分けたりすることで柔軟な対応が可能となります。

この機能は信託の特徴的な機能であり、財産管理委任にこのような機能を持たせることはできません。

信託の機能については、講学上さらに細かく分類することが可能ですが、代表的なものを取り上げてみました。

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