定款概説(株式会社・総則編)

定款

今回は、定款について考察していきます。

定款とは、会社の組織や運営に関する根本規則のことをいいます。会社の憲法ともいわれます。
定款は、株主や債権者に閲覧されることがありますし、何か問題が発生したときに定款の規定が重要になってくることもありますので、会社を設立する際は、会社の実態に即した定款をプランニングすることが大切です。
とはいえ、急いで会社を作らなければならないといったケースでは、定款をじっくり検討する余裕がないので、定款にどの程度規定を置くか難しい判断を迫られる場合もあります。
一つ言えることは、定款は一度作ったら終わりというわけではなく、会社の成長とともに定款も適宜見直していくことが必要だということです。

株式会社の定款の記載事項には、絶対的記載事項、相対的記載事項及び任意的記載事項があります。
絶対的記載事項とは、必ず定款に記載しないといけない事項です。この事項を1つでも欠くと定款自体が無効となってしまいます。
相対的記載事項とは、定款に記載しなくても定款の効力に影響はないが、定款に記載しなければその効力が認められない事項のことをいいます。
任意的記載事項とは、絶対的記載事項・相対的記載事項以外の事項で、法令に違反しない限り自由に定款に記載することができる事項のことをいいます。

それでは、法務局のホームページに公開されている商業・法人登記の申請書様式のうち、「1-3株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない発起設立)【H30.2.28更新】」で示されている定款のひな型を例に、株式会社の定款の条項を概説していきます。

 

(商号)
第1条 当会社は,○○商事株式会社と称する。

まずは商号です。
かつては、同一市町村内において同一の営業のために他人が登記した商号と同一又は類似の商号を登記することはできませんでしたが、平成18年の会社法の施行に伴って類似商号の禁止制度が廃止されたため、商号と本店の所在地とがともに同一でなければ、商号が既存の会社と同一又は類似のものであっても、登記することが可能となりました。
ただし、不正の目的をもって、他の会社と誤認させる商号を使用することは禁止されていますし、商標法や不正競争防止法にも留意が必要です。
商号には、会社の種別に応じて、必ず株式会社、合同会社、合資会社又は合同会社の文字を入れなければなりません。
なお、会社法の施行に伴って、新たに「有限会社」を設立することはできなくなりました。

 

(目的)
第2条 当会社は,次の事業を営むことを目的とする。
1 ○○の製造販売
2 ○○の売買
3 前各号に附帯する一切の事業

目的は、登記事項証明書に記載されますので、登記事項証明書を見た人が理解しやすいように目的を定める必要があります。
目的には、①営利性、②適法性、③明確・具体性が要求されます。会社法の施行前は、明確・具体性が厳しく審査されていましたが、類似商号禁止制度の廃止に伴って、明確・具体性の要件は大きく緩和されました。
官公庁等の許認可等が必要な事業については、目的の定め方に注意する必要があります。

 

(本店の所在地)
第3条 当会社は,本店を○県○市に置く。

本店の所在地は、定款には独立の最小行政区画(市町村。東京都の23区については区)までを規定すればよいとされています。
本店の所在地によって、管轄法務局、訴えの専属管轄地、法人住民税の納税地等が決まります。
会社法の施行前は、定款に特段の定めがない限り本店所在地又はその隣接地でなければ株主総会を開催することができませんでしたが、会社法施行後は、この制限は廃止されました。

 

(公告の方法)
第4条 当会社の公告は,官報に掲載してする。

公告の方法は、官報、日刊新聞紙、電子公告の3つの方法の中から、いずれかを選択することができます。
定款に公告方法の規定を置かない場合は、会社法の規定により官報に掲載する方法となります。
なお、公告方法を官報又は日刊新聞紙による方法としている場合であっても、決算公告のみをインターネット上のホームページに掲載することも可能です。この場合には、貸借対照表等が掲載されるウェブページのURLを登記する必要があります。

今回は、定款の「第1章 総則」について概説してみました。

 

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