定款概説(株式会社・株式編)

定款

今回は、前回に引き続き定款について概説していきます。

前回は、法務局のホームページに公開されている商業・法人登記の申請書様式のうち、「1-3株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない発起設立)【H30.2.28更新】」で示されている定款のひな型をモデル定款として、「第1章 総則」を概説していきました。
今回は、「第2章 株式」を見ていきます。

 

(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は,○○○株とする。

公開会社においては、発行可能株式総数が設立時発行株式の総数の4倍を超えてはならないとされていますが、非公開会社(全株式譲渡制限会社)においては、この4倍以内という制限はありません。ただし、無制限というわけではないので、一定の枠を定める必要があります。

 

(株券の不発行)
第6条 当会社の発行する株式については,株券を発行しない。

会社法の施行に伴って、株券を発行しないことが原則となり、株券を発行する場合は、その旨を定款で定めることが必要になりました。
会社法の施行前は、株券を発行することが原則で、株券を発行しない場合は、その旨を定款で定めることが必要でしたので、会社法の施行後は、原則と例外が逆転した形になります。
なお、会社法の施行時に存続する株式会社については、登記官の職権により株券発行会社である旨の登記がなされています。

 

(株式の譲渡制限)
第7条 当会社の株式を譲渡により取得するには,当会社の承認を受けなければならない。

全株式について譲渡制限の規定がある場合は、発行可能株式総数、機関設計、役員の任期等について、定款自治の範囲が広くなります。
比較的小規模な株式会社を設立するような場合は、株式の譲渡制限規定を設けるのが一般的です。
上記の定款例では、承認機関が「当会社」となっていますが、承認機関としては、株主総会、取締役会、取締役の過半数の決定、代表取締役等が考えられます。
定款に具体的な承認機関を定めず「当会社」とした場合は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)が承認機関となります。

 

(株主名簿記載事項の記載又は記録の請求)
第8条 当会社の株式取得者が株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求するには,株式取得者とその取得した株式の株主として株主名簿に記載され,若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人が当会社所定の書式による請求書に署名又は記名押印し,共同して請求しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令に定める場合には,株式取得者が単独で株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求することができる。

株式の譲渡を会社や第三者に対抗する要件は、株券を発行する会社かどうかによって異なります。
株券発行会社の場合は、株券の占有が第三者への対抗要件になり、株主名簿の名義書換が会社への対抗要件になります。
株券不発行会社の場合は、株主名簿の名義書換が会社・第三者に対する対抗要件になります。

 

(質権の登録及び信託財産の表示)
第9条 当会社の株式につき質権の登録又は信託財産の表示を請求するには,当会社所定の書式による請求書に署名又は記名押印したものを提出しなければならない。その登録又は表示の抹消についても,同様とする。

質権設定を会社や第三者に対抗する要件は、株券を発行する会社かどうかによって異なります。
株券発行会社の場合は、株券の占有が会社・第三者への対抗要件になります。
株券不発行会社の場合は、株主名簿に質権者の記載をすることが会社・第三者に対する対抗要件になります。
信託を会社や第三者に対抗する要件も、株券を発行する会社かどうかによって異なります。
株券発行会社の場合は、株券の占有が会社・第三者への対抗要件になります。
株券不発行会社の場合は、株主名簿に信託財産である旨の記載をすることが会社・第三者に対する対抗要件になります。

 

(手数料)
第10条 前2条に定める請求をする場合には,当会社所定の手数料を支払わなければならない。

株主名簿の名義書換の手数料についての規定です。

 

(基準日)
第11条 当会社は,毎事業年度末日の最終株主名簿に記載又は記録された議決権を有する株主(以下,「基準日株主」という。)をもって,その事業年度に関する定時株主総会において権利行使すべき株主とする。ただし,当該基準日株主の権利を害しない場合には,当会社は,基準日後に,募集株式の発行,合併,株式交換又は吸収分割等により株式を取得した者の全部又は一部を,当該定時株主総会において権利を行使することができる株主と定めることができる。
2 前項のほか,株主又は登録株式質権者として権利を行使すべき者を確定するため必要があるときは,取締役の決定により,臨時に基準日を定めることができる。ただし,この場合には,その日を2週間前までに公告するものとする。

基準日は、株主総会で権利を行使することができる株主を一定の日の株主名簿に記載された株主に限定する制度です。
第1項は、定時株主総会に関する基準日の規定、第2項は、臨時株主総会、株式分割等に関する基準日の規定です。

 

(株主の住所等の届出)
第12条 当会社の株主及び登録株式質権者又はその法定代理人若しくは代表者は,当会社所定の書式により,その氏名,住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。届出事項に変更が生じた場合における,その事項についても同様とする。

会社が株主に対してする通知は、株主名簿に記載された株主の住所にあてて発すれば足りるとされています。

今回は、定款の「第2章 株式」について概説してみました。

 

 

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